♡1%の奇跡♡ノンフィクション

自身のノンフィクションの奇跡なお話。奇跡に触れてみませんか?①から順番に読んでくださいね☆

⑤伝わらない

 ICU(集中治療室)にいたとき、わたしはたくさんの管や機械につながれていた。

その中で気管切開という喉を切開してチューブで肺に空気を送ったりするものがあった。

そのせいでまったく声を出すことができなかった。

 それを知ったお見舞いに来てくれていた幼なじみが、大きな紙に大きな字で*あ〜ん*まで表にして書いてくれた。

でも3ヶ月間も眠ったままだったわたしの体はまったくと言っていいほどに動かなくて腕を上げることも指を指すこともできなかった。

 声は気管切開のせいで出なかったけど、目や口の動きで伝えていた。

その中で、全然伝わらなくてすごくイライラした言葉が二つあった。

 一つ目は*DS(ゲーム機)*

ゲーム機のDSを持ってきて欲しかったのだけど*でぃーえす*が口の動きではなかなか伝わらない。

持ってきてもらっても手は動かないのに、どうするつもりだったんだろう。

 二つ目は*くうちゃん*

くうちゃんは小さい頃からずっと大切に持っているテディーベアの名前です。

 部屋が個室でとても寂しくて、いつも抱いて眠っていたくうちゃんを持ってきてもらおうと思ったのです。

でも、これもなかなか伝わらなくて何十回も口を動かして伝えて、最終的に母がわかってくれて次の日にくうちゃんが部屋にやってきた。

 苦労して伝えたくうちゃんが母の手から渡された。

わたしの手や腕は、まだ動かなかったので腕か脇の間に置いてもらった。

すると、くうちゃんがあり得ないほどに重たい。

いつも抱き枕みたいに抱いていたのに、それが耐えきれないくらいに重たい。

 それだけわたしの体は弱っていたし、長いこと眠っていて筋力もおちていたのだろう。

結局、看護師さんに枕元に移動させてもらいました。

 くうちゃんを抱けるのになったのはICUの部屋を出て4人部屋に移った頃だったかな。